スウェーデン発祥として最も有名なのがノーベル賞。そして、ノーベル賞を受けた人々がどのような偉業を成し遂げたのか、どんな背景があったのか、そしてその価値を具体的にどう評価したのか、その全てが体験できる場所がストックホルムにある「ノーベル博物館」です。
「ノーベル賞」という名前は知っていても、歴史やノーベル賞部門の種類、誰が選考するのかなど、細かくは知らない方が多いのでは?
この記事では、なぜノーベル賞が生まれたのか、アルフレッド・ノーベルの生い立ちと共に、ノーベル博物館の魅力と見どころ、役立つ情報をご紹介します。
ノーベル賞とは?
ノーベル賞は、物理学・化学・生理学/医学・文学・平和・経済学*の6分野にて顕著な功績を称える、世界的な賞です。1901年、世紀の発明家、アルフレッド・ノーベルの遺言によって始まりました。
ちなみに、「経済学」の分野は、アルフレッド・ノーベル自身の考案ではなく、スウェーデン国立銀行の設立300周年という節目に、1968年にスウェーデン国立銀行が、アルフレッド・ノーベルを記念する目的で設立。選考は、物理学賞・化学賞同様、スウェーデン王立化学アカデミーからですが、賞金はノーベル財団から支給される他の賞とは異なり、スウェーデン国立銀行から支払われます。ノーベル財団は正式には「経済学賞」をノーベル賞とは認めていません。
アルフレッド・ノーベルとは?
アルフレッド・ノーベルは、1933年10月21日ストックホルムで誕生します。
彼は、17世紀に体の「リンパ菅」を発見した科学者、オラウス・ルドベックを祖先にもち、彼の父は爆発物をはじめとした開発の事業をしていました。自然と科学や発明の分野に興味を持つようになったノーベルは、後に355もの特許を取得する発明家になります。
ある発明の反省から生まれた賞
ノーベル賞が生まれた理由は、「ダイナマイト」の発明から。
彼の発明の中でも有名なのが「ダイナマイト」。彼はこの兵器の開発により、巨額の富を築き「ダイナマイト王」と呼ばれます。しかし、この発明は、人はたった一瞬で大勢の人間を殺害することが可能としてしまいました。この破壊的な爆薬を発明してしまったことに彼は悩み苦しみます。
そして彼は、このような遺言を残します。
「私の全財産は、人々のために貢献した人へ、賞の形で分配されなけばならない。」
そして、1901年にノーベル賞が誕生しました。
誰がノーベル賞を選考するのか?
選考団体は各部門につき、以下のようになっています。
- 物理学賞・化学賞 スウェーデン王立化学アカデミー(Swedish Academy of Sciences)
- 生理学/医学賞 カロリンスカ研究所(Karolinska Institute in Stockholm)
- 文学賞 スウェーデンアカデミー(Swedish Academy)
- 平和賞 ノルウェーストーティンブ(ノルウェー国会・立法府)(Norwegian Storting)
この選考する団体も、アルフレッド・ノーベルの遺言によって指定されていました。
ノーベル賞の受賞日
世界的にも注目される受賞日。受賞の日は、アルフレッド・ノーベルの命日である12月10日です。
賞は、物理学・化学・生理学/医学・文学の分野をストックホルムにて、平和賞のみノルウェーの首都オスロにて授与されます。平和賞のみノルウェーで授賞式が執り行われる理由は、ノルウェーとスウェーデンの歴史に基づきます。
ノーベルが遺言を書いた当時の1895年、ノルウェーはスウェーデンに統治されていました(1814年〜1905年)。両国共に、対立していた歴史があるものの、スカンジナビア半島に在住する同じ民族として、協力をし合ってきた2国。ノーベルは、スウェーデンとノルウェーの両国に敬意を払うため、そしてノルウェーのスウェーデンからの独立に向けての「平和的かつ民主的な姿勢」を見て、ノルウェーが平和賞にふさわしいと考えました。よって、平和賞のみオスロにて授与されます。
ストックホルムの授賞式では、賞はスウェーデン国王から手渡され、盛大な晩餐会や舞踊会が催されます。
ノーベル博物館とは?
スウェーデンの首都ストックホルムに位置するノーベル博物館は、そのノーベル賞とその受賞者たちを記念するための施設。
旧証券取引所を改装したこの博物館は、大広場、ストラトーゲットの一角を占め、冬には目の前の広場でクリスマスマーケットが開かれるなど、その立地は観光の拠点としても最適です。
ノーベル博物館では、ノーベル賞の歴史、過去の受賞者たちの情報、さらにはアルフレッド・ノーベルの遺言の原文を直接目にすることができます。これはまさに貴重な体験と言えるでしょう。さらに、ノーベル賞受賞者たちの手による直筆サインが書かれた椅子に座り、ノーベル賞の授賞式の晩餐会で提供されるデザートを楽しむこともできます。
ノーベル博物館の見どころ
ノーベル博物館には多くの見どころがありますが、ここでは特に注目すべきポイントをいくつかピックアップしました。
ノーベル賞受賞者のパネル
天井からたくさんぶら下がっているパネルたちは、過去のノーベル賞受賞者について詳しく説明されています。博物館内の空中レールをぐるぐる回り、パネルはその数800枚以上!その多さからもノーベル賞の100年以上にわたる歴史とその多様性を感じることができます。
受賞者の展示
ノーベル博物館の一番の見どころは何と言っても、ノーベル賞受賞者の展示です。これらの展示により、受賞者たちがどのような研究や業績を残したのか、その詳細を知ることができます。例えば、物理学者アルバート・アインシュタインの相対性理論や、化学者リンダ・B・バックの嗅覚受容体に関する研究など、その成果を視覚的に理解することができます。
ノーベルの遺言
ノーベルの遺言書はノーベル博物館で見ることが可能。その内容を読むことで、賞の創設者であるアルフレッド・ノーベルの思想やノーベル賞の設立の背後にある哲学をより深く理解することができるでしょう。
ノーベル賞受賞者のサイン
ノーベル博物館内のカフェでは、ノーベル賞受賞者が直接サインを残したイスが並んでいます。それぞれのイスには受賞者の直筆サインがあり、その場所でコーヒーを楽しむことができます。
また、ノーベル賞授賞式の晩餐会で提供されるデザートを味わうこともできます。一時的にでもノーベル賞受賞者の気分を味わえる貴重な体験です。
ノーベル賞受賞者の遺品
過去のノーベル賞受賞者の貴重な遺品も展示されています。メダル、招待状など様々で、受賞者たちの努力と才能、そして彼らの献身的な貢献を物語っています
ノーベル博物館に行くには
アクセス
ストックホルムの中心部、ガムラスタン地区に位置するノーベル博物館は、公共交通機関を利用して容易にアクセス可能。地下鉄のガムラスタン駅から徒歩数分で到着します。
また、観光地である王宮やストックホルム大聖堂からも近く、観光ルートに組み込むのに最適な位置にあります。
開館時間と入場料
ノーベル博物館は一年中開館しており、主に午前10時から午後5時まで開館していますが、シーズンや曜日によって変動することがありますので、訪れる前に公式ウェブサイトで確認してください。また、入場料もかかりますが、学生や65歳以上の方々は割引が適用されます。
ノーベル博物館で、ノーベル賞を身近に感じよう
世界的に「最も権威のある賞」としての威厳を保ち続ける、ノーベル賞。そして、その世界を変えた革新的なアイデアや、その背後にある情熱を目の当たりにできる場所、ノーベル博物館。
過去の受賞者や歴史について興味が湧いたら、ぜひノーベル博物館を訪れてみてください。
スウェーデン語表記 | Nobelmuseet |
所在地 | Nobel Museum, Stortorget 2, 103 16 Stockholm |
料金 / 入場料 | 大人120SEK |